#社会人基礎力
人生100年時代を踏まえ、経済産業省が考案した社会人基礎力は、社会人が自主的に学びキャリアを形成し、切り開いていくための能力の指標です。ここでは、社会人基礎力を構成する3つの能力と12の能力要素について具体的に学び、それを生かしたキャリア開発について解説しています。
目次
社会人基礎力を構成する3つの能力と12の能力要素
大学等を卒業して社会人として働きはじめて数年が過ぎた頃、「社会人としての基礎的な能力が自分に身についているのだろうか?」と疑問に思い、将来のキャリアについて考えはじめます。
そのとき、資格の取得や自己啓発セミナーを受講するかもしれませんが、それらのスキルアップと社会人基礎力とは異なるものです。
資格を取得しても自己啓発セミナーを受けても、社会人基礎力なければ、仕事で生かすことができません。
社会人基礎力として掲げられているのは、3つです。それは、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」です。そして、3つの社会人基礎力は、12の能力要素から成り立っています。
ここでは、社会人基礎力を構成するそれぞれ3つの能力と12の能力要素について、解説していきます。
前に踏み出す力
仕事ができる社会人は、一般的に積極性が高いと考えられます。上司の指示を受けなければ仕事ができないのであれば、個人としての成長は望めません。そのため、初めての業務内容やプロジェクトでも勇気を出して対応する「前に踏み出す力」が必要です。
この「前に踏み出す力」とは、主体的に行動できる「主体性」、自分だけで解決できないときは周囲の協力を得る「働きかける力」、責任ある行動で切り開く「実行力」から構成されます。積極的に行動できる人には、周囲も一目置くため、担当する仕事が成功する確率も高くなります。
このように、社会人は仕事をする上で、仕事に対して積極的な姿勢と責任感を持ちつつ、「前に踏み出す力」で自ら開拓していく能力が求められます。
考え抜く力
仕事にはパーフェクトな答えや方法はありません。どのような仕事でも完全形でないため、改善を繰り返すことが求められます。そのとき、業務内容に何も疑問を感じなければ、改善には結びつきません。
この疑問を感じるためには、仕事の課題を最後まで「考え抜く力」が求められます。この「考え抜く力」とは、仕事の課題を発見する「課題発見力」、その課題の解決方法を探り新しい価値を見出す「創造力」、そして課題解決を具現化させるために整える「計画力」から構成されます。
この「考える力」は、新しいプロジェクトを成功させるときに大切であり、思考停止せずに結論に至るまでのプロセスを粘り強く考え抜くことが必要です。
このように、社会人には最後まであきらめず仕事における課題や解決方法を「考え抜く力」が求められます。
チームで働く力
仕事は1人ではできません。上司、同僚、顧客など、さまざまな人との関わり合いが存在しています。たとえ、前に踏み出す力や課題に対する答えを考え抜く力が十分でも、チームとして機能しなければよい成果を上げることはできません。
この「チームで働く力」とは、「発信力」「傾聴力」「柔軟性」「情況把握力」「規律性」「ストレスコントロール力」の6つの要素が関係しています。
コミュニケーション力に関係するのが、「発信力」と「傾聴力」です。自分が相手に伝えるだけでなく、相手の思いや考えを知ろうと努めることが大切です。また、チーム構成員の仕事の状況を把握し、柔軟に対応することも大切です。そして、チーム全体が悪い方向に向かわないように正していく規律も必要です。
最後に、ストレスケアは必須です。チームで働くには、自他の意見を尊重し、仕事が順調に進展することが大切であり、時として調整役としての役割を求められることもあります。
3つ目の社会人基礎力として、他人と協力する「チームで働く力」が求められるのです。
社会人基礎力を身につけるメリット
社会人として、仕事で成功していきたいならば、社会人基礎力を充実させることが不可欠です。
経験を積み上げ、資格を身につけたとしても、社会人基礎力が不足すると、仕事で成功することが難しくなるからです。そして、社会人基礎力があれば、家庭や趣味など、人生の幸せも保持できるはずです。
ここでは、社会人基礎力を習得することのメリットについて詳しく考えていきます。
メリットとして、「個々のスキルアップが図れること」「多くの人や企業から求められること」、そして「臨機応変に対応できるようになること」が挙げられます。
個々のスキルアップが図れる
社会人の基礎力を身につけると、個々のスキルアップが図れます。スキルアップすることで仕事の幅が拡大し、主体的にキャリア形成を行うこともできます。この個々のスキルアップは、会社に帰属するものではなく、個人に帰属するため、転職したとしても次の仕事で役立てられます。
また、社会人基礎力を身につけると、コミュニケーション能力もアップし、チーム単位で業務活動する力もアップします。社会人基礎力は、時代の変化に合わせるためにも、継続的に学び続けることが大切です。
文部科学省は社会人になっても継続的に学び続ける「リカレント教育」を推進しており、国をあげて社会人基礎力の向上を支援する施策を行っています。
多くの人や企業から求められる
社会人基礎力を身につけると、スキルや能力が備わっている人材と認知されます。そして、個人や企業から求められる存在となり、仕事のオファーも殺到するはずです。
「他力の前に自力」という言葉があるように、社会人基礎力を高める努力をすることで、結果的に多くの人や企業からの求められる人材となります。また、自分のスキルを参考にキャリアを決めていくため、スキルの上昇とともにキャリアの選択肢も広がっていきます。
企業が求めるのは、主体的に考え行動できる「自律型人材」です。
自律型人材は企業の生産性を向上させるため、企業の人事担当者は人材の思考と行動を観察しています。社会人基礎力を身につけることで、自律型人材へと育てば、多くの人や企業から求められます。
臨機応変に対応できるようになる
IT革命や働き方改革など、激しく変化する時代において、仕事を行っているとさまざまな未知の出来事に遭遇します。そんな未知の出来事に遭遇した際、高い社会人基礎力を身につけていると混乱しません。
どんな不測の事態であっても、しっかりと考え行動することで答えが見えてきます。12要素からなる社会人基礎力を身につけていれば、柔軟な対応が可能なのです。
たとえば、「まず状況を把握し、課題を発見する」こと、そして「その課題を解決するためのプロセスを考え抜く」こと、その後「課題解決のための計画を立て、実行する」という流れをきちんと押さえていけば、未知の出来事にでも対応できます。
社会人の基礎力は、変化の激しい時代では必須の能力です。
社会人基礎力の鍛え方
自分を成長させ、仕事での成功に大切な社会人基礎力は、すぐに身につけられるものではありません。
しかし、少しずつ意識し改善を重ねれば、社会人基礎力は育っていきます。そのためにはまず、客観的な自分の立ち位置を把握することが必要です。次に、社会人基礎力を意識して身につけることも成長には大切です。
ここでは、社会人基礎力の鍛え方について考えていきます。
自分を俯瞰してみる
自己評価と他者評価(他己評価)は異なります。自分ができていると感じていても、他者からみれば能力が不足していると思われることもあります。
社会人基礎力は、自分を客観的な視点から見て評価することが大切です。主観的な目線だけではわからないこともあるのです。
中立的な視点から自分の社会人基礎力を評価するには、「自分で俯瞰する方法」と「他人から客観視してもらう方法」があります。
自分の社会人基礎力の課題を特定し、改善計画を立てることが大切です。そして、改善計画を実施し検証を続けていくことで、客観的にみても社会人基礎力が向上していきます。
日頃から社会人基礎力を意識する
社会人基礎力がある程度備わっていても、それを発揮することが習慣化されなければ、いつまでたっても改善や向上ができません。
社会人基礎力は日頃から意識することで、自然と身についていきます。そして、業務に生かそうとすることで、応用力も上がってきます。社会人基礎力が当たり前のように発揮されるようになるには、自分の現状を手帳に書きとめておくなど、明確に意識するために行動することが大切です。
目標を文字にして見える化し、達成を目指すなど目に見えるかたちで成長を意識することは、社会人基礎力について意識していくことに直結するのです。
社会人基礎力を高めるためのチェック項目
社会人基礎力を育てていくには、具体的にどのようなことを行えばよいでしょうか?
はじめに、どの能力・どの要素が足りていないかを把握します。そして、具体的に何を・どのように学んでいくのかを計画します。このとき、各々がどの能力と要素を身につけていけばよいかを把握し、具体的なキャリアを描いていくことが大切です。
ここでは、社会人基礎力を高めるために、「何を学ぶか」「どのように学ぶか」「どう活躍するか」という視点から解説します。
何を学ぶか
そもそも「社会人基礎力」とは、人生100年時代の新たな切り口・視点として経済産業省が考案して2006年に発表したものです。その中で、人材力強化において、現在どの能力のどの要素を学び、次に何を学ぶかを明確にしておくことが重要だとしています。
「何を学ぶか」を明確にすることで、自分のスキルとこれからのキャリアを容易に把握できるはずです。社会人自らが目標を設定し、キャリアを構築していくことが大切になる時代であることの表れとも言えます。
どのように学ぶか
何を学ぶかを明確した上で、「どのように学ぶか」も明確にしましょう。そうすることで、学びの意義も深まります。
適切な学び方を実施すれば、スキルの定着率も変わります。そして、自分の中にある知識や経験も生かすことも考慮します。
今までのキャリアを踏まえて、自分の知識、経験、能力を総合的に考え、キャリアを形成していくように学ぶことが大切です。
どう活躍するか
学ぶことや学ぶ方法が決まり、学びをはじめても、それが具体的な活躍につながらなければ意味がありません。そのため、具体的に自分がどう活躍するかを考えておくことも重要です。
学びが自分の夢や目的に適うことを知ることで、行動することの意義もわかってきます。そのため、学びが社会貢献や自己実現にどうつながるのかを明確にしておくことも必要です。
社会人基礎力を診断する方法
社会人基礎力の診断は、「社会人基礎力診断」としてインターネット上で受けられます。この社会人基礎力診断は、企業が人材採用のときに参考資料とすることもあります。
自分の現在の適性を社会人基礎力アンケートで把握することは、社会人基礎力診断を受けて自分の現状や今後の能力の高め方を把握しておけば、これからの仕事のキャリアを考える上でも参考になるはずです。
まとめ
21世紀に入り、IT化やグローバル化による社会環境の変化、働き方改革による柔軟な働き方への転換など、時代の変化とともに社会人が求められる能力も変わってきています。
こうした中で、個人も社会人として新しい環境に順応できるように変化していくことが必須です。
時代の変化に対応し、自分の確実なキャリア形成を目指していくためにも「社会人基礎力」を重視し、自己の現状把握やスキルアップに努めていくことが重要です。