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企業には上場企業と非上場企業の2種類があることに気づき、この2つは何が違うのだろうと疑問に思ったことはありませんか。この記事では、上場企業とはどのような企業なのか、非上場企業との違いはどこにあるのか、年収はどのぐらいなのか、上場企業で働く場合のメリット・デメリットは何があるかといった話題を取り上げて解説します。
目次
上場企業とは
まず、ビジネスの話題で耳にする東証一部上場企業とは、どのような企業かを解説します。
「上場」とは、基準を満たす株式会社が経営資金を調達するために発行する証券(株式)を証券取引所で売買できる状態にすることです。上場には証券取引所の厳しい審査に通らなければならず、審査をクリアして証券取引所での株式取引資格を与えられた株式会社だけが上場会社または上場企業と呼ばれます。
現在、日本に存在する株式市場は四つです。このうち最も大きな東京証券取引所の市場では、2022年4月3日をもって市場第一部、市場第二部、マザーズ、JASDAQからなる区分制度が廃止され、2022年4月4日にプライム市場、スタンダード市場、グロース市場という3種類の区分に切り替えられました。 これに伴い現在は、市場ごとのコンセプトなどをふまえて、それぞれ異なる基準が設定されています。
ここで話を戻すと、東証一部というのは東京証券取引所の市場第一部のことで、市場第一部に上場していた企業の多くはプライム市場に移りました。現在は、東証一部上場企業という呼び名はなくなり、東証プライム上場企業という言葉が使われています。
プライム市場
プライム市場のコンセプトは「多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資者との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場」です。
3市場の中で最も審査基準が厳しいプライム市場には、2024年2月9日時点で1,655社が上場されています。
スタンダード市場
スタンダード市場のコンセプトは「公開された市場における投資対象として一定の時価総額(流動性)を持ち、上場企業としての基本的なガバナンス水準を備えつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場」です。
プライム市場よりも満たすべき基準のハードルが下げられたスタンダード市場には、2024年2月9日時点で1,615社が上場されています。
グロース市場
グロース市場のコンセプトは「高い成長可能性を実現するための事業計画及びその進捗の適時・適切な開示が行われ一定の市場評価が得られる一方、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業向けの市場」です。 スタートアップ企業などで構成されるグロース市場には、2024年2月9日時点で563社が上場されています。
【参照元】上場会社数・上場株式数|日本取引所グループ
上場企業と非上場企業との違い
上場企業と非上場企業との大きな違いは、自社の株式を証券取引所で公開しているか否かです。つまり上場企業の株式は、証券会社に口座を持つ一般の投資家が自由に売買できますが、非上場企業の株式は未公開株なので、売買は株式を保有している方と直接取引する相対取引で行わなければなりません。
また、上場企業と非上場企業とでは、財務内容の公表に関するルールが異なります。上場企業の場合には四半期開示義務が課され、3か月に一度、決算短信と決算報告書を公表しなければなりません。ただし、作成にかかる企業側の負担を考慮して、決算報告書については決算短信への一本化が検討されています。
これに対して非上場企業には、四半期開示義務は課されません。非上場株式会社については、財務内容の公表は年に一度、決算公告を行う義務を果たすことでよいとされています。
以上の違いは、なぜ上場するのかということとも深く関わります。
上場企業になることで知名度や信用度が確実に上がり、資金調達がやりやすくなるはずです。
上場の実質基準
上場企業として認められるには、形式基準と実質基準の2つを満たさなければなりません。形式基準とは、株式の流通量を確保して株価の乱高下を防ぎつつ、株主への利益還元が見込める企業のみを上場させるために定められる基準です。 たとえば、プライム市場であれば上場時に見込まれる株主数が800名以上というように、基準は数字などではっきり示されます。
これに対し、実質基準は投資家を守るために、上場しても問題がない企業であることを見極めるために定められる基準です。 実質基準では、審査される企業の収益基盤が安定しているか、継続して事業活動が行われているか、影響力の強い大株主や取締役が企業の経営に悪影響を及ぼしていないか、株価を左右する企業内容を投資家に適正に公表できる体制が整備されているかなどが確認されます。
上場企業の年収
東京商工リサーチによると「2022年度の上場企業3,235社の平均年間給与(以下、年間給与)は、620万4,000円(前年比2.4%増)で、前年度(605万4,000円)から15万円増加した」と報告されています。
これに対し、国税庁長官官房企画課が公表した「令和4年分 民間給与実態統計調査」によれば、源泉徴収義務のある民間事業所に1年を通じて勤務した給与所得者を調査したところ、2022年の年間給与の平均は正社員(正職員)523万円、正社員(正職員)以外で201万円でした。
この調査で正規雇用の平均年収523万円は、非上場企業と上場企業をあわせたものであり、上場企業が平均値を押し上げているので、非上場企業の平均年収はこれよりも低くなります。したがって、上場企業の平均年収は、非上場企業の平均年収よりもかなりよいことがわかります。
【参照元】上場企業3,235社の年間給与 2022年度は10年度以降で最高の620万4,000円 トップはM&Aキャピタルパートナーズの3,161万円|東京商工リサーチ【参照元】令和4年分 民間給与実態統計調査|国税庁
上場企業で働くメリット
ここからは、上場企業を就職先に選んだ場合に期待できる3つのメリットについて解説します。
社会的信用を得られる
厳しい基準を満たし続けることが求められる上場企業に採用されて勤務できれば、倒産の可能性が低いために今後も安定した収入を見込めると判断されて、社会的な信用を得やすくなります。 このような信用は、たとえばクレジットカードを作ったり、住宅ローンの借り入れを行ったりする際に役立ち、これらの審査において有利に働くに違いありません。
平均年収が高く、福利厚生が整っている
前述のように、上場企業の平均年収は非上場企業よりも高いと考えられます。 また、上場企業は常に経営が健全であることを求められ、投資家に企業情報を開示しなければなりません。そのため、福利厚生や労働環境が整っている企業が多く、好待遇を受けられる可能性が高まります。
優秀な人と働ける
上場企業は非上場企業よりも知名度や信用度が高く、雇用するための予算もしっかり確保されていることが多いので、優秀な社員が自然に集まるはずです。 仕事の手本を見せてくれるような優秀な上司や同僚と一緒に働ければ、多くのことが学べて自分が大きく成長できるに違いありません。
上場企業で働くデメリット
上場企業で働く場合のメリットは大きいですが、デメリットもあるので注意が必要です。ここではあらかじめ知っておきたいデメリットを2つ紹介します。
業績維持のプレッシャーがのしかかる
上場企業に入社すると、厳しい上場基準を達成し続けるために、売上や時価総額を上げることを求められ、どうしても上がらない場合であっても下がらないよう維持しなければなりません。 また、上場企業では株主の影響力が大きいので、株主からの圧力で従業員に厳しいノルマが課されると、職場がブラック化する危険性があります。
会社が買収される可能性がある
上場企業の株式は誰でも自由に買えるので、ある日突然、会社が買収されてしまう悲劇が起こるかもしれません。 もし会社が買収されれば、その途端に待遇やポジションが大きく変わることがあり得ますし、最悪の場合には、リストラの対象となって退職を余儀なくされる事態が起こり得ます。
非上場企業で働くメリット
非上場企業イコール上場企業よりも劣るということでは決してありません。ここでは非上場企業で働くメリットを2つ取り上げて紹介します。
経営方針が簡単に変わらない
非上場企業の場合には、主な株主は一般の投資家ではなく、その企業や関連会社の役員や社員です。そのため非上場企業では、社外株主たちの意見にいちいち耳を傾けずに自社の経営判断ができるので、社内の意向に沿った経営方針を貫けます。 非上場企業に就職すれば、社外株主から課せられるノルマや敵対的な買収といった心配事がないという意味で、安心して働けるはずです。
新しいことに挑戦しやすい
非上場企業は社外株主が経営に口をはさまないので、チャレンジ精神をもった従業員の意見が反映されやすく、新しいことに挑戦しやすいというメリットがあります。
非上場企業で働くデメリット
一方デメリットですが、非上場企業の経営については基本的に外部の意見が入りません。そのため経営陣の意向がそのまま経営に反映されやすくなり、とくに大株主が社長の場合には、ワンマン経営に陥りやすくなります。
また、設立してから年月があまり経っていない非上場企業に就職した場合には、事業が成長していく段階にあるため、ほとんどの仕事で業務フローが定まらず、マニュアルが作成されていないかもしれません。
そのため、非定型の仕事が不得意な場合には、業務がうまく進められない可能性があります。
まとめ
上場企業とは、厳しい審査を通過して証券取引所から株式取引資格を与えられた企業の総称です。上場企業は非上場企業よりも平均年収が高く、就職できれば好待遇が期待できます。
ただし、上場企業に就職すると、常に業績維持のプレッシャーと戦わなければならないので、その点を覚悟しなければなりません。非上場企業とは異なり、上場企業では経営に株主の意見が反映されるので、社内の総意と異なる経営判断が下されることがあります。